女性と髪

2011.03.31

昭和も戦前くらいまで、日本女性の髪はキチンと結いあげられた日本髪が大部分だった。女性と髪というのは切っても切り離せない関係にあったのである。たとえ起きがけであっても、家族にも寝乱れた髪を見せないことが女の身だしなみとされていた。髪が乱れているところを見せるのは、江戸時代のいい身分の女性にとっては、裸体を見られるよりまだ恥ずかしいことだったのだ。浮世絵にはよく、髭をほどいて洗っている洗い髪の女性の絵があるが、あれは当時のポルノグラフィであった。その髪をほどいてザンバラになることは、それ自体、自分が人間であるという理性を捨て去ることだった。こうして、人を呪おうとするものは、自分が「魔」の領域に近づくことによって、呪いの力を得ようとしたのである。これは男の場合でも同じことである。平安時代末期の天皇、崇徳天皇は、保元の乱に破れて讃岐の国へ流された。彼は都を呪い、髪を結ばず、ぼうぼうと伸びるにまかせ、ついには天狗となって、日本の悪鬼の帝王と化したという。この場合も、蓬髪(ぼさぼさ髪)が魔の力を人間に与えるシンボルとして働いている。髪をほどく、伸ばす、これらの行為はみな、人が人でなくなるという反逆の呪術のシルシであったのだ。
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