これまでは保育士、そしてそのなかで育つ子どもに期待される「いい子」像が、文化や社会により異なる点を概観してきたが、次に養育者に期待される親役割についてみていこう。子どもをとりまく環境のひとつとして、直接の養育者である親の養育態度や親がもつ価値観は、子どもの育ちに大きな影響を与える。ここでは「いい子」像の分析と同様、2つの方法で親役割観を概観する。ひとつは教科書に描かれた親役割観の異文化間比較による分析である。いまひとつは日本、台湾、中国の保育機関における面接調査による異文化間比較からの分析結果である。教科書に描かれた親役割観の異文化問比較の分析については、ここではそのなかからアジア6ヵ国に期待される4種類の親役割観の分析について紹介する。日本、台湾、韓国、中国、タイ、バングラデシュの6ヵ国の小学校国語教科書に描かれた親の育児行動を、「実際的な世話」「しつけ」「知識の授与」「心理的な世話」の4種類に分類し、これら6ヵ国の親の育児行動を比較した。なお、4種類の育児行動の簡単な分類基準を、まず育児行動を親の性によって分けずに分析したところ、6ヵ国間に有意差がみられ、日本の親が「実際的な世話」をもっとも多くしていた。6ヵ国のなかで「しつけ」を多く行っているのは中国やタイであった。また「知識の授与」に関しては6ヵ国中、中国がもっとも高い割合を示した。次に親の性に分けて分析したところ、日本や韓国ではとくに母親の「実際的な世話」が、他の国に比べて有意に高かった。教科書が社会の価値観を投影しているとすれば、実際にも他国の親に比べて日本や韓国の母親には、こまごまと子どもの世話をすることがより多く期待されていると推測される。
[参考]
保育士・幼稚園教諭の専門学校
http://www.seitoku.jp/kttcsu/