教育が人を人間らしい人間に形成する働きであるとすれば、それはどのようにして行われるのであろうか。人間形成の基本要因として、従来から「遺伝」と「環境」が挙げられ、この二つの要因が相互に作用し、規定しあって人間形成がなされると考えられてきた。言い換えると、人間らしい人間にするためには、先天的なまたは遺伝的な要因としての素質と、後天的な要因としての環境・教育が大きく係わると考えられている。子どもは、両親から引き継いだ素質を持って生まれ、やがて成長して成人となるが、その素質が立派に開花し発展するためには、そのような素質が開花発展するのに相応しい環境・教育がなければならない。このように人が人間として立派に生き得るようになるためには、つまり、人が人間的に成長するためには、遺伝的な素質とそれに相応しい環境・教育の影響と双方の相互作用がなければならないのである。これら二つの基本的要因のうち、どちらがより大きな人間形成の要因であるかということは、過去、いろいろな形で論争されたが、今日の分子レベルの遺伝学によってもその問題が解明されたとは言い難い。したがって、人間形成の問題は、素質と教育のいずれが大事かという問題ではなく、あくまでも両者の相互作用のなかで、問われ、解明されるべきである。実際、人間の形成は、その人の素質を適切な環境の中で教育し、本人が努力することによって成し遂げられるのである。
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